日本鉱物学会年会講演要旨集
日本鉱物学会2004年度年会
セッションID: k06-01
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軽希土類元素の挙動から予想される大気酸素の進化
*村上 隆佐藤 守宇都宮 聡笠間 丈史ブルス スリナバス
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抄録
1. はじめに 先カンブリア時代の大気中の酸素は22から20億年前の間で急上昇した、というのが現在の有力な仮説である。一方、古土壌は当時の大気を反映して形成した土壌であるので、酸素進化の研究対象となっている。しかし、古土壌は、形成後、続成・変成作用を受け、鉱物学及び化学的特質が変化しているため、その特質の変化の解釈により、上記とは異なる仮説も提出されている。我々はカナダ、Pronto地方の古土壌から、風化時に形成し、そのまま保存されているCe(III)を多く含むrhabdophane (LREE phosphate)を発見し、この古土壌が形成した25億年前は酸素が欠乏した大気であった、ということを発表した(Murakami et al., 2001, EPSL)。本発表では、28億年前から17億年前までの古土壌中のrhabdophaneのCe含有量の変化から、予想される大気酸素の進化について報告する。2. 実験 使用した古土壌試料は、Mt. Roe#2 (27.75-27.55億年前)、Pronto (24.75-24.45億年前)、Cooper Lake (24.75-24.45億年前)、Ville Marie (23.8-22.15億年前)、Sub-Thelon (18.5-17億年前)である。まず、XANESによりrhabdophane中のCeは90%以上が3価であることを確認した(Takahashi et al., 2003, GCA)。Rhabdophaneのサイズは一般に0.2 _から_ 0.3ミクロン程度なので、Field-emission型のSEMの加速電圧を10 kVにして、反射電子像法により、古土壌中のrhabdophaneを探した。Rhabdophaneの定量分析はSEMに付属するEDSを用いた。この時、電圧は15 kVにした。試料サイズが小さいので、希土類元素の組成そのものは求められなかった。軽希土類元素の標準試料を用い、試料の強度比からCe(wt%)/La(wt%)を求めた。一部のrhabdophaneはEPMAでも測定した。Ce/LaのEDSとEPMAの差は約10%であった。3. 結果および考察 Prontoのrhabdophaneは常にapatiteと関連した組織を持っていたが、それ以外の古土壌試料ではrhabdophaneは孤立して出現していた。RhabdophaneのCe/La比は、Mt. Roe#2、Pronto、Cooper Lake、Ville Marie、Sub-Thelonでそれぞれ、2.1(+/-0.3)、2.3(+/-0.1)、2.2(+/-0.1)、1.6(+/-0.1)、0.2(+/-0.1)であった。なお原岩のCe/La比は1.9 - 2.1である。この年代のサンプル数に制限はあるものの、ほぼ24億年前を境に、Ce/La比は、減少し始め、ほぼ17億年前にゼロに近くなる。酸化的な風化条件でのCeとLaは完全に異なる挙動をすることがわかっている。即ち、鉱物が溶解し、溶出した軽希土類元素のうち、Laはrhabdophane(もしくはflorencite)に入るが、Ce(III)は溶出した後、溶液中でCe(IV)に酸化され、cerianite (Ce(IV)O2)として沈澱し、CeとLaは分別される。ところが、還元的又は非酸化的風化条件では、溶出したCe(III)はそのままCe(III)としてとどまり、前述した通り、Laとともにrhabdophaneに入る。従って、上記のCe/La比の結果は、24億年前までは、Ce(III)は溶液中で酸化されないが、それ以降は、徐々に酸化される量が増加していることを示している。酸化還元に敏感な元素であるFeやMnも26から16億年前の間で、徐々に酸化されたことが古土壌の分析から示されている(Sreenivas et al., 2004年合同大会)。古土壌中のFe、Mn、Ceの解析は、大気中の酸素は22から20億年前の間で急上昇したというより、むしろ26から16億年前の間で上昇していった、というほうが整合的である。
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© 2004 日本鉱物科学会
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