抄録
近年,精神科病院入院の統合失調症患者の歩行時の転倒事故の頻度に関する報告が見られるよう になってきた1).様々な運動の種類がある中で「歩行運動」もその例外ではなく,この運動に関係する「肢運動制御」と「姿勢制御」の解析が必要である.しかし,統合失調症患者は,様々な場面において,姿勢の硬さ,動作の緩慢,ぎこちなさが観測されている3).本研究において,静止時の足底圧力量割合や静的身体平衡に関する評価である重心動揺計による評価は,両群間に差はなかった.このことは,静止状態での姿勢制御では,健常群と統合失調症群の間には違いが少ないことが推測された.一方,歩行時の,踵部 と足趾部にかかる圧力量の割合圧力は,健常群と比較すると,統合失調症群において有意に高値となった.しかし,静的バランス(重心動揺)については,健常人との違いは認められなかった.静止立位時および 歩行時の足底圧力量割合における左右差の偏りは,自己感と関係していることが示唆された.