こころの健康
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イヌバラ法 (自己象徴的カウンセラー訓練技法) の治療的意義
大辻 隆夫平野 かおり
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2004 年 19 巻 1 号 p. 49-60

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抄録

自己象徴的カウンセラー訓練技法としてのイヌバラ法は, カウンセリング技法の修得と向上を目的にしたロールプレイングによる訓練法である。クライエント役がイヌやバラなど人間以外の役割演技をすることにより, 独自のプロセスと展開を見いだすところに特徴がある。本研究では, カウンセラー役の体験ではなく, クライエント役の体験に焦点をあて, その内容を精神分析的視点から分析し, 治療的意義を検討した。方法として, イヌバラ法訓練セミナーの参加者26名に, セミナー終了後に「クライエント役体験を通して, 演じた役に自己が反映されているか。どこに反映されているか。自己洞察を得る事ができたか。治療効果があったか」の4項目の質問からなる自由記述形式のアンケート調査を行った。得られた22名の回答を検証し, 考察した。その結果, クライエント役を演じることには大きな意味があること, すなわち自己象徴過程が促進され, 自己洞察に至り, 変化に結びつくというような治療的意味を見出した。イヌバラ法によりクライエント役が自己洞察を得て, 変化するという裏付けは, カウンセラー役の訓練効果を測る上で重要な指標となることを示唆するものである。

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© 日本精神衛生学会
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