日本のモバイル技術は世界の最先端にあると言われ, 「ケータイ」(日本の携帯電話・PHS) は国際語になるほどユニークな使われ方をしているメディアであるという。ケータイの使用とコミュニケーションの相互関係については研究が少ない上, 心理発達上, 同年代の友人関係が特に重要な時期とされる中学生における実態はほとんど知られていない。筆者らは, 中学生のケータイの所持および使用の実態を明らかにし, ケータイが友人関係や心理面, 生活面に与える影響に関する中学生の意識や, メールの使用頻度との関連について検討することを目的とし, 質問紙調査を実施した。対象は首都圏の5公立中学校の2年生651名であり, 学級担任を通じて生徒に説明し, 同意を得た生徒に対して授業内に実施した。有効回答者578名 (有効回答率88.8%, 男子304名, 女子272名) のうち, ケータイ所持者は285名 (49.3%), 非所持者は293名 (50.7%) で約半数がケータイを所持していた。電話としての使用頻度は少なく, 比較的近くにいる友人との非用件 (いわゆるおしゃべり) のメール使用が中心で, その使用頻度は『1日に11通以上』の者が148名 (54.3%) と過半数であった。もともと友人の多い生徒が, ケータイを頻繁に利用しており, 友人関係上, 有効活用できていると思われた。一方, メール使用に関係して情緒不安を経験している者も約半数あり, メールの使用頻度が高い者ほど, 生活時間が不規則になったり, ケータイなしではやっていけないと感じるなど, 心理的な依存のリスクが潜在している実態が明らかになった。生徒自身が意識している問題点を手がかりに, 上手な使い方について考えるためのメディア教育が必要と思われた。
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