2017 年 81 巻 p. 50-58
この調査研究は大村自身が編著に携わった教科書、昭和50(1975)年版『改訂標準中学国語』(教育出版)における「読書指導カリキュラム」の重要なコンテンツである ①単元 ②読書教材 ③学習の手びき ④ブックリスト の関わりと機能を分析したものである。この分析によって、大村はま読書生活指導の「構造」と「展開」を明らかにできる。
この教科書で大村はまは、学習者が目的意識と必要感に支えられて読む場を、中学校における読書指導カリキュラムに位置づけた。そのカリキュラムは、学習者を自己の課題発見と解決に向けた「探究的な読書」へと導くものである。
この教科書での「読書活動」は、1)データベースである『読書生活通信』から、積極的に読書に関する情報や技術を取り込みつつ、2)様々なジャンルの本を実際に読む展開となっている。さらに3)「読書活動」の全ては、「記録・報告」を「書く」活動に収束されていく。学習者がこれらの「読書活動」を段階的・系統的に体験していく過程において「読書力」を獲得する構造が、ここにはある。