2019 年 85 巻 p. 23-31
本稿は、石森延男と第二次世界大戦期に編纂された第5期国定国語教科書の関係を明らかにするもものである。とくに、①なぜ石森が文部省に招聘されたのかという理由と、②石森が執筆した教材の内容的特徴と、その基底をなした彼の思想について検討を行った。
そこで明らかになったのは、石森の文部省招聘には、「東亜」に関する教材を執筆するという教育内容上の要求、合科主義に基づく国語教科書の編纂という教育方法上の要求、対外的な日本語波及のための教科書作成という教育政策上の要求といった三つの力学が働いていたことであった。
教材の内容に関しては、軍国主義的な性格や、「民族ナショナリズム」に基づく日本中心主義的性格が内在することが分明となった。石森は、時代の要求に応え得た有能な教科書編集者であった。