コンピュータ&エデュケーション
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特集 「ラーニングアナリティクスと教育クラウド」
教育ビッグデータの大きな可能性とアカデミズムに求められるもの
-情報工学と社会科学のさらなる連携の重要性-
寺澤 孝文
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2015 年 38 巻 p. 28-38

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抄録

 ICTの進歩により,これまで想像できなかった膨大で多様なデータが手に入り始めているが,人間の行動データについては,単に大量のデータが手に入っても,意味のある情報が得られにくい本質的な問題がある。その問題を解決しなければ,ビッグデータ研究は大きく発展しない可能性が高い。本論文では,人間の行動予測を目指すビッグデータ研究が,次のステージでは,量から質への転換が必要となる理由に説明を加え,その問題を教育分野で解決する「スケジューリング」という新しいアプローチを紹介する。さらに,新たな方法論を用いた検証研究において,個人レベルで詳細で膨大な縦断的学習データ(マイクロビッグデータ)を収集・解析することで,これまで見えなかった個人レベルの学習プロセスが初めて可視化できることを示す。さらに,それを個別にフィードバックすることで,学力や学習意欲の低下,不登校問題など解決の難しかった問題を根本的に解決できる道筋が明確になりはじめていることを紹介する。そこで紹介する事実は,ビッグデータの質(精度)を高めることが,大きなパワーにつながることを予期させる。逆に,そのパワーの根源となる教育ビッグデータを,学術の世界に留め置けなければ,社会科学にとって取り返しのつかない事態になることも十分予期される。

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© 2015 一般社団法人CIEC
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