コンピュータ&エデュケーション
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38 巻
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
特集 「ラーニングアナリティクスと教育クラウド」
  • 武田 俊之
    2015 年 38 巻 p. 12-17
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     教育におけるデータの増加と,証拠にもとづく教育改善などへの要望からラーニング・アナリティクスという研究領域が活性化している。本論文では,この新しい領域について,背景,定義,フレームワーク,データ,事例の面からの分野の概要と実践事例を紹介する。
  • 森本 康彦
    2015 年 38 巻 p. 18-27
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     高等教育機関を中心に,教育の質保証・質向上の実現のためにeポートフォリオが急速に導入され,初等中等教育においても,学びの過程で生成される児童生徒の学習記録をICT機器を用いて蓄積し,いわゆるeポートフォリオとして学習指導や学習評価に活かそうとする取り組みが始まっている。一方,学習行動ログやICTの操作ログなどの学習履歴データを分析・可視化するラーニングアナリティクスが注目を集めている。しかし,ラーニングアナリティクスにおいて,どんな意味のある有用なデータをeポートフォリオとして蓄積・分析し,学習者にどのように提示すべきかなどの教育的観点からの議論は十分にされていない。そこで,本論文では,eポートフォリオを活用した学習におけるラーニングアナリティクスについて明らかにする。さらに,教育ビッグデータのあり方について言及するとともに,教育ビッグデータに対応した新時代のeポートフォリオシステムのコンセプトである「eポートフォリオ2.0」について説明する。
  • -情報工学と社会科学のさらなる連携の重要性-
    寺澤 孝文
    2015 年 38 巻 p. 28-38
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     ICTの進歩により,これまで想像できなかった膨大で多様なデータが手に入り始めているが,人間の行動データについては,単に大量のデータが手に入っても,意味のある情報が得られにくい本質的な問題がある。その問題を解決しなければ,ビッグデータ研究は大きく発展しない可能性が高い。本論文では,人間の行動予測を目指すビッグデータ研究が,次のステージでは,量から質への転換が必要となる理由に説明を加え,その問題を教育分野で解決する「スケジューリング」という新しいアプローチを紹介する。さらに,新たな方法論を用いた検証研究において,個人レベルで詳細で膨大な縦断的学習データ(マイクロビッグデータ)を収集・解析することで,これまで見えなかった個人レベルの学習プロセスが初めて可視化できることを示す。さらに,それを個別にフィードバックすることで,学力や学習意欲の低下,不登校問題など解決の難しかった問題を根本的に解決できる道筋が明確になりはじめていることを紹介する。そこで紹介する事実は,ビッグデータの質(精度)を高めることが,大きなパワーにつながることを予期させる。逆に,そのパワーの根源となる教育ビッグデータを,学術の世界に留め置けなければ,社会科学にとって取り返しのつかない事態になることも十分予期される。
  • -ラーニングアナリティクスの効果的な利活用に向けて-
    梶田 将司
    2015 年 38 巻 p. 39-42
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     本稿では,京都大学における教育学習支援に係る日常的な業務や長期的な戦略・計画の実践・経験に基づいた情報環境の現状と課題を,将来のラーニングアナリティクスの効果的な利活用に焦点を当てながら述べる。
  • -e-Learningでの教育・学習活動データの連携と技術標準化-
    平田 謙次
    2015 年 38 巻 p. 43-48
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     Learning Analyticsは多様な利用可能性が取り上げられる中,学習及び学習行動が実際に生じた記録としての学習ログを取り扱うことができることからe-Learningにおける学習品質という観点に着目した。学習品質の主要な特徴は,教育設計と教育活動の実行および学習実行,そして学習成果間の関係の妥当性を検証可能とするものである。しかし,個々に閉じた中で研究的に解析を行っていくだけではなく,Learning Analyticsとしての技術として確立させ,また広く利用しようとするには課題が多く残されている。そこで,品質工学から教育・学習でのデータの流れを整理したうえで,教育および学習側の活動のデータ項目や形式およびインターフェイスを標準化しておくことが必要となる。
  • 林 敏浩
    2015 年 38 巻 p. 49-54
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     四国の8大学は地域に根ざしつつ高い専門性を持つ人材育成を目標にe-Knowledgeコンソーシアム四国(eK4)を設立した。eK4のe-Learning基盤は,分散LMSとShibboleth認証を特徴とするe-Learningによる教育連携を実現した。また,平成22年度から単位互換制度に基づくe-LearningをeK4連携大学で実施している。今後の展開のひとつとしてeK4のe-Learning基盤に蓄積されたデータ分析は重要である。本稿では,前半でeK4の特徴について概説し,後半で,教育クラウドとLearning Analyticsに着目して,eK4のe-Learning基盤におけるLMSの学習履歴データの利活用について考察した。
  • -その批判的検討-
    山川 修
    2015 年 38 巻 p. 55-61
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     Learning Analytics(LA)は,現在,教室サイズのデータを対象に実施されている。これらのデータを,組織を超えて統合して教育ビッグデータとすることは可能であろうか。これが本稿の基本的な問いである。この問いに答える上で学習者の学習行動をミクロに可視化するLAだけでなく,学習者全体の学習行動をマクロにとらえる教学IRも同時に検討すべきと考えている。本稿では,教学IRを,組織を越えて実施している福井県の高等教育機関の連携プロジェクト(Fレックス)を例に取りながら,LAと教学IRに於いて,組織を越えるデータの収集や分析は,何が可能で,何が難しいかを解説する。さらに,将来に向けて,組織を越えたLAにつながる,可視化した仮説を統一的に説明するモデル構築の方法論を提案する。
事例研究
論文
  • 西村 和貴, 下村 勉
    2015 年 38 巻 p. 80-85
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     小学校の外国語活動においては,その学びを通して興味や関心を高めることは大切なことである。本研究では,児童になじみの深いカタカナ英語に注目し,英語音声データベース構築に焦点をあて実践を行った。実践の結果,英語の発音への理解や興味が有意に増したことが確認できた。また,コンピュータで自分の声を聞いて発音を向上させようとしたり,データベースを使いクラスメイトの英語に学ぼうとしたりする様子が見られた。
  • 吉田 広毅
    2015 年 38 巻 p. 86-91
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     本研究は,対面での知識共創型活動をともなう高次能力学習型反転学習の教員養成課程科目への導入が,「実践的指導力」の主要な構成要素である「授業設計力」に及ぼす影響を明らかにすることを目的として行われた。事後の質問紙調査の結果から,反転学習の導入によって学習者は,予習講義ビデオの内容が分かりやすい,授業づくりに対する興味が増した,総合的に授業に満足したと認識していることが明らかになった。また,反転学習においても課外での基礎学習の時間が確保され,授業内で知識共創型活動に取り組む時間が増加した。結果,講義のみによって学んだ学習者と比較して,授業設計力が有意に向上したことが示された。
  • 澤口 隆, 巽 靖昭
    2015 年 38 巻 p. 92-97
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     対面型大人数講義での学修効果を高めるため,学生所有のスマートフォン等を利用し,講義中にいつでも質問や意思表示ができる情報プッシュ型バックグラウンド稼働クリッカー(名称:bgClicker)を開発した。学生は従来型のクリッカーと同様に,教員からの問いかけに応答する形式で,授業に双方向性を持たせることができるだけでなく,学生側から教員に対して講義中いつでもフィードバックをボタンやテキストメッセージを使って伝達することができる。設定した閾値以上の数の学生が同様の意思表示をしている場合にのみ,プッシュ型通知(アラーム音)によって教員に通知される。教員は講義中に手元の端末を常に気にする必要はなく,必要な時にのみ学生のフィードバックをリアルタイムに把握することができる。bgClickerは無償で公開される。
  • ―高専における学際的工学教育構築への取組み―
    三河 佳紀, 小野 真嗣, 渡辺 暁央, 小薮 栄太郎, 三上 拓哉
    2015 年 38 巻 p. 98-103
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     日本における鉄軌道事業者は車両老朽,自然災害及び人為的過誤による様々な不具合や事故に直面している。昨今においては,そのような不具合や事故は発生直後即座に各種報道機関を通して大きく取り上げられる傾向にある。各鉄軌道事業者は乗客の安全確保のため最大限の対策を講じているものの,今後も全ての不具合や事故を完全に除去することは不可能であろう。本研究では,北海道における鉄軌道事故データを収集しデータベースを構築した。このデータベースを用い,事故現場を可視化することで事故傾向を調べたところ幾つかの特徴があった。本研究を通じ,著者等は鉄軌道事業者に対して取組可能な改善努力計画の提案を行う予定である。具体的には,不具合や事故の発生を極力避けるために,鉄道運営の高専版教育プログラムを提供する。本稿では,著者等が行った鉄軌道事故の記録収集やそのデータベース構築に関する手法について中間報告を述べる。
  • 奥原 俊, 朝日 大貴, 伊藤 孝行
    2015 年 38 巻 p. 104-109
    発行日: 2015/06/01
    公開日: 2015/12/01
    ジャーナル フリー
     若者が社会の一員として円滑なコミュニケーションを行うためには,正しい敬語で会話できることが必要である。近年では,手軽に敬語が学べるWebシステムが存在しているが,その多くは単純に出題された問題を解く形式であり,学習者が持つ知識に基づいた学習環境を提供しているとは言えない。そこで,本研究では学習者がどれだけ敬語を理解しているかを測定した後に学習習熟度に合わせた問題を推薦するシステムを実装した。具体的には,学習者が受けたプレースメントテストの結果から学習者の敬語の得意箇所,不得意箇所を判定する。学習者が誤っていた敬語から,日本語コーパスに則った正しい敬語が使えるように支援する。 本研究では学習者に学ばせる方法として,敬語を無作為,敬語を得意箇所,敬語を不得意箇所の3方法の違いを明らかにする比較実験を行った。その結果として,無作為に学ばせる方法,及び正解箇所が多い得意な領域を優先的に学ぶ方法よりも,敬語の使い方を間違っていた箇所が多い苦手な領域を優先的に学ぶ方法に学習効果が認められた。
編集後記
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