日本蚕糸学雑誌
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家蚕幼虫皮膚細胞の色素顆粒の遺伝生化学的研究
(II) 色素顆粒蛋白の分析
辻田 光雄桜井 進
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1964 年 33 巻 6 号 p. 447-459

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抄録

1. 色素顆粒を構成する蛋白は可溶性蛋白と不溶性蛋白とに分けられる。前者は顆粒の内方にあり, 後者は顆粒の外周を包む膜状物あるいは外殻を形成するものである。
2.可溶性蛋白はDEAEセルローズに吸着させた後pH8.0のリン酸緩衝液で溶出し, 次の3分画に分けられた。
i) 第1分画には褐色色素と結合した蛋白が集まる。ii) 正常型の第2分画にはsky-blueの蛍光を示す物質と結合する蛋白が含まれる。黄体色, 淡黄体色蚕試料ではsepiapterinと結合する蛋白がこの分画に集められる。iii) 第3分画には尿酸と結合する蛋白, isoxanthopterinと結合する蛋白が集められる。
3.クエン酸ナトリウム-塩酸緩衝液中に色素顆粒の可溶性蛋白を入れると, ある範囲のpHの緩衝液中では, 結晶状沈澱物を生ずるが, pHの値により異なる分画の蛋白が沈澱してくるように考えられる。
4. 顆粒内の可溶性蛋白ばかりではなく, 顆粒の周囲の外殻にも相当多量の尿酸およびisoxanthopterinが検出された。
5. 色素顆粒は幼虫皮膚の油蚕性を支配する主要な要素と見做される。
6. 多くのいわゆる油蚕遣伝子は色素顆粒の形成に直接的あるいは間接的に関与しているものと考えられる。

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