日本蚕糸学雑誌
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家蚕細胞質多角体病ウイルスの経卵伝達による発病
有賀 久雄長島 栄一武井 隆三
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1964 年 33 巻 6 号 p. 460-463

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抄録

2齢起蚕に外観4角形を呈する細胞質多角体 (TC) を添食し, それらの幼虫が変態して化蛾したものの雌雄を交配したり, あるいはその雌に無接種の雄蛾を交配し, 次代蚕の4齢あるいは5齢起蚕を低温処理 (5℃, 24時間) し, 発病蚕児につき病気の種類, 多角体の形などにつき調べた。得られた結果は次の通りである。
1. 前代に外観4角形を呈する多角体を添食した個体を雌にして交配した次代蚕の最終齢起蚕低温処理区の病蚕で, 特異的に4角形多角体をもつ細胞質多角体病が認められた。この結果から, 前代に接種された4角形多角体を示す細胞質多角体病ウイルスは潜在性の形で母体から卵を通して, 次代に伝達されたものと考えられた。
2. 前代の2齢起蚕に4角形多角体病ウイルスを接種されて変態した雌蛾に, 無接種区の細胞質多角体病抵抗性および感受性系統の雄蛾を交配した次代蚕での本病の発生率は, 抵抗性系を雄にした交配組合わせのほうが, 感受性系統雄を用いた組合わせより低かった。このことから, 経卵伝達されたウィルスによる4, 5齢期での発病に対して, その個体のもつ抵抗力に関係する遺伝子の働きも重要な役割を演ずるものと考えられた。

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