日本蚕糸学雑誌
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希薄な酸処理した野蚕絹フィブロインの酸化と特異陥没現象との関係
桑原 昂筒井 亮毅渡辺 忠雄
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1970 年 39 巻 1 号 p. 23-32

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抄録

希薄な酸で各時間処理したシンジユ蚕, エリ蚕, テン蚕およびサク蚕の4種の野蚕絹フィブロインについて, 過酸化水素による酸化作用と特異陥沒現象との関係を比較究明した。
(1) 過酸化水素による酸化作用によって, 予めおこなった希薄な酸処理2~10時間において特異陥沒現象が発生するが, 4~6時間処理で最大となりこの処理時間を前後に遠ざかるにしたがって軽微となる。とくに10時間以降においては, 極めて軽微かまたは全く見られない傾向を示している。
(2) このような現象は, 野蚕絹フィブロイン中のチロシンが非結晶領域, 準結晶領域に主在し, 結晶領域には存在しないか存在しても極く微量でしかも主鎖の大部分が化学的に安定なアラニン連鎖から成りたっていることによると考察した。

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