日本蚕糸学雑誌
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オガサワラクワの特性補遺 特に巨大細胞の形について
勝又 藤夫
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1974 年 43 巻 3 号 p. 241-244

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抄録

著者は父島産のオガサワラグワを調査した結果, その特性を一層明確にする必要ありと認めた。すなわち小泉 (1917) その他の学者によって報告された此の桑樹の特性に次の事項を追加する。(1) オガサワラグワの古木の外皮は松の木の外皮の如く剥離片となる特性がある。此の事実は津山 (1970) により始めて示されたが, 長野県下伊那郡のヤマグワ (?) についても殆ど同様な現象があった。(2) 拇花穂の外形があたかも小麦の花穂の如き外観を呈し, 一般の桑樹 (ヤマグワ・カラヤマグワなど) の拇花穂の外形と全く異る。(3) 一般の桑樹 (ヤマグワ・カラヤマグワなど) の場合葉縁の鋸歯の上縁には必ず中心点があるがオガサワラグワの場合にはそれがない。(4) 桑葉の巨大細胞は何れの場合でも表皮面に隆起し, 多くの場合突起がある。オガサワラグワの巨大細胞には隆起も突起もない。ハチヂョウグワの巨大細胞には突起がないが著者は此の如き巨大細胞の形を Type Aとした。オガサワラグワの巨大細胞の形を“Type A未発育型”と称したハチヂョウグワの巨大細胞は Type Aであるがオガサワラグワの巨大細胞はわずかに異ると言える。
以上の如くオガサワラグワの特性は他の桑属植物とは著しく異る事実からオガサワラグワは桑属の集団ではその最も外側の位置にあると言える。

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