通常,試料の凹凸像を取得するのに用いられる原子間力顕微鏡(AFM)を,高分子一本鎖を直接伸長し,その力学物性を測定するモードに応用することができる.ナノフィッシング法と筆者らが呼ぶこの方法の現時点で把握している問題点と展望について述べる.特に準静的ナノフィッシングにおける原点決め精度の重要性と,現行の理論モデルの非妥当性について検討した.強制振動ないしノイズ解析による動的ナノフィッシングによって高分子鎖の粘弾性的な性質がどのように実測され得るかについてもその可能性を述べる.最後に高速ナノフィッシングが将来開拓しうる高分子一本鎖の内部構造解明に繋がる糸口的な実験結果についても報告する.