環状高分子は,主鎖末端が存在しないため,同一の組成・分子量であっても『かたち』(トポロジー)の違いから直鎖状高分子とは異なった特性を示す.筆者らは高分子の『かたち』に根ざした機能(トポロジー効果)の発現を狙って,環状高分子合成法の開発と機能化されたさまざまな環状高分子の新奇物性探究を行ってきた.新規合成法として,筆者が所属する研究室で過去に開発された ESA-CF と呼ばれる手法とクリックケミストリーを組合せることで,複数の環の結合様式に基づき bridged 型および spiro 型と呼ばれる多環状高分子の選択的合成に成功した.また,水素結合性のユニットを環に導入することで,高分子カテナンを効率的に構築した.一方,トポロジー効果の発現として,分子内メタセシス反応によって合成した両親媒性環状ブロック共重合体の自己組織化を行い,ミセルを構築したところ,直鎖状の前駆体が形成するミセルよりも熱安定性がおよそ 50℃ も向上するという現象が見られた.さらに,ペリレンジイミド部位を含む環状および対応する直鎖状の高分子を合成し,単一分子蛍光分光によってそれらの拡散挙動を観察したところ,『かたち』に基づいて拡散の様式が異なることが示された.