高分子化學
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ポリ酢酸ビニルのモデル低分子化合物のケン化反応
桜田 一郎坂口 康義加賀宇 迪夫
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1960 年 17 巻 177 号 p. 87-94

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抄録

ポリ酢酸ビニルのケン化機講をより明確にする目的で。エチレングリコール・ジアセテート・1, 2-および1, 3-プロピレングリコール・ジアセテート, 1, 3-および2, 3-ブチレングリコール・ジアセテート, トリアセチンをモデル物質として選び, これら化合物のケン化速度を水およびアセトン・水混合液 (容積比75:25) 中でNaOHまたはHClを触媒として測定した。見かけの速度定数kは反応の進行に伴って, 水溶液の場合はわずかしか変化しないが, 含水アセトンの場合は一般にかなり増大する。このkの上昇の程度はNaOH触媒, 両エステル基間の距離の小さいエステル, 2級エステルの方が大きい。これらの挙動はポリ酢酸ビニルの場合と同様である。ただし, kの初速度定数に対する比は1分子中のエステル基数以上にはなりえない。これらの結果に基き, ポリ酢酸ビニルのケン化反応における加速効果は主として同一分子中の水酸基の触媒吸着作用により, 一部立体障害の減少によるという結論を導いた。この結論は従来の考えと一致している。

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