1962 年 19 巻 205 号 p. 307-312
実験的に求められた固有粘度-分子量関係 (粘度則) の定数は測定に用いた高分子物質の分子量分布によって変化することが知られている。この変化は最終的には実験的に求められる分子量が重量平均分子量Mwあるいは数平均分子量Mnであって, 理論の要請する粘度平均分子量Mvではないことに起因する。そこで本報告では沈降速度法により測定された分子量分布を基にして, 分子量分布の幅が変化するに従ってMw あるいはMnとMvがどのような相関関係を示すかを実験的に検射し, 粘度則を正しく求めるためにどの程度の分別を行なった試料を用いればよいかの指針を得た。なお, あわせて分子量分布の幅としていかなる尺度を用いるのがこのような問題に対して合理的であるかを考察し, Mw/Mnが最適であることを見出した。また, 沈降定数および拡散定数の分子量依存性についてもまったく同様の考察を加えた。