高分子化學
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逐次分別沈殿法の電子計算機によるシミュレーション
第2報初濃度, 分別区分量, 再分別操作の分別効率に及ぼす影響
上出 健二小川 勉松本 万亀子
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1968 年 25 巻 284 号 p. 788-802

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抄録

逐次分別沈殿法を利用して重合度分別を実施する場合, 分別効率に及ぼす初濃度, 区分量 (区分の大きさ) および再分別操作の影響を検討した。Flory-Huggins理論を基礎にして最も確からしい分布 (数平均重合度xn=150) を持つ高分子試料を仮想的に電子計算機によって分別した。その結果, 初濃度を小さくすると (0.1%程度にまで), 分別データはSchulzの方法によって解析できる。前報 (上出, 他: 高化, 25, 440 (1968)) で提出した三角形近似法もかなり精度よく適用できる。分別区分の全体に対する重量分率を小さくすると, 分別区分の重合度分布はかえって広くなり, 区分量を無限に小さくするときに得られるxw/xn (ここで, xwは重量平均重合度) は1.62である。これはFloryの相対的分別効率のパラメーターでは説明できない。分別効率として, 高分子の濃厚相と希薄相への分配率のパラメーターσを利用する方がより合理的である。初濃度や分別区分量を変えて分別された第1区分の重合度分布の幅はσ で統一的に説明できる。再分別操作を実施すると, Schulzプロットは真の分布 (最も確からしい分布) により近づく。しかし, その一致の程度は, 再分別をしないもとの分別データを三角形近似法で解析した場合よりも悪い。結局, 分別効率を上げるためには初濃度を小さくするのが有効である。

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