1968 年 25 巻 284 号 p. 803-808
フレーク状ガラスにメタクリル酸メチルをγ線照射グラフト重合させた。アルミノケイ酸塩ガラスフレークに対してのみ, MMAのグラフト重合が認められ, 特にそのガラスフレークを, 重クロム酸塩硫酸混液で前処理した場合に, 容易にグラフト重合が, 起こっている。グラフト重合体の検出はIRスペクトルの測定で行なった。アルカリケイ酸塩ガラスや, 無水ケイ酸に対しては, グラフト重合は見られなかった。グラフト重合体の検出されたものについては, 熱分解生成物をガスクロマトグラムで調べ, また加熱分解温度を測定して, グラフト重合体の性質を検討した。次に, グラフト重合反応の機構解明の手がかりを得るために, γ線照射によつて, フレークに生ずる活性種をESRで追求した。重クロム酸混液で前処理したアルミノケイ酸塩ガラスフレークにのみ顕著に現われる20.6Gの等間隔にある6本のhfsを有する共鳴吸収線は, 初め4個の酸素と配位して, 格子形成にあずかつていた4配位のアルミニウムが, 酸処理によって, 酸素を1個失ない, そこに捕捉された電子によるものと考えられた。この特徴的に現われたESR吸収線とグラフト重合反応の関係について検討した。