1968 年 25 巻 284 号 p. 825-834
乳化重合によって合成したアクリル酸ブチル, またはアクリル酸エチルとメタクリル酸との共重合体エマルジョンを用いて, エマルジョン中でのイオン橋かけ反応について検討した。金属橋かけ剤として酢酸亜鉛を用い, 共重合体中に含有された亜鉛の定量, 赤外吸収スペクトルによるカルポキシレートの定量, および膨潤度からの橋かけ密度の算出などが, 橋かけ反応の確認および定量に用いられた。エマルジョン中での橋かけ反応はきわめて速く, かつ, 温度依存性も認められない。橋かけ剤濃度に比例して橋かけ密度は増加するが, 含有酸基の一倍当量程度で一定となる。メタクリル酸含量の増加に伴い, メタクリル酸がブロック的に存在するようになり, 橋かけ剤の反応率が低下してくる。また, 橋かけ度はエマルジョン中のポリマー粒子の大きさに従って増加するが, pHによる影響は少ない。膜の機械的性質は, 橋かけ剤濃度の増加に応じてヤング率および強度が増大し, 伸度は落ち, 一般的な橋かけ効果が顕著に認められる。