1972 年 29 巻 327 号 p. 467-471
照射PVAの335, 375および400-500mμの吸収がどのような構造をもったラジカルに基づくものであるか検討した。まず, 真空中および空気中照射でともに335, 375および400-500mμに吸収が認められ, 両者で差異はなく酸素の影響はない。つぎにPVA中の異種結合の影響を調べた結果, カルボニル基は影響を与えないが, 1, 2-グリコール結合は大きな影響をもっており, 過ヨウ素酸処理したPVAではこれらの吸収は認められなかった。また皮膜に酢酸ナトリウムを添加すると吸収に顕著な影響を与えることがわかった。これらのことから335mμの吸収は-C=O-C-OH-構造の捕捉ラジカルによるもので, 375および400-500mμの吸収はこの構造が崩壊してできた構造のラジカルC=O- (CH=CH) n-によるものと推測した。また, 前照射したPVA皮膜にスチレンをグラフト重合せしめた場合のスチレンのグラフト率および照射PVAの捕捉ラジカルに基づく吸収の変化の様子を調べた。その結果, いずれの温度でもほぼ1時間の反応で吸収は消失するが, スチレンがこの捕捉ラジカルによりグラフト重合を開始したか否かはっきりしない。