リグニン [天然リグニン (MWL)] およびリグニン誘導体 [リグニンスルホン酸 (LSA), チオリグニン (TL), メチル化および硫化リグニン] に対するスチレンの同時照射法による放射線グラフト重合について研究した。照射生成物からホモポリマーと未反応リグニンをベンゼンとリグニンの溶剤で抽出して, リグニンースチレングラフトポリマーを単離した。リグニンをスチレン中で照射してもほとんどグラフト化しないが, 種々のスチレンー溶媒系中で照射すると容易にグラフト化される。効果的な溶媒は, メタノール (MWL, LSA, TLに対して), 酢酸 (MWL), アセトン (LSA), ジオキサン (TL) であった。H2Sによる硫化によって, リグニン (MWL) に連鎖移動定数の大きなジスルフィド基 (-S-S-) を導入するか, リグニンのフェノール性水酸基をメチル化するとグラフト重合はきわめて容易になる。グラフトポリマーから, 過酢酸酸化によって幹リグニンを分解して, 枝ボリスチレンを分離した。枝ポリスチレンの重合度とホモポリスチレンのそれとには大差が認められない。両者の重合機構はほぼ同じであると思われる。赤外吸収スペクトルから, グラフトポリマー中の幹リグニンと枝ポリスチレンの比は1: 1であった。また, リグニン中のグラフト活性点について検討した。