1973 年 30 巻 344 号 p. 742-747
酢酸ビニル (VAc) とプロピオン酸ビニル (VPr) のランダムあるいはブロック的な共重合体の水酸化ナトリウムによるけん化反応を含水アセトン中, 30℃で行なった。ランダム共重合体の反応速度は同じ組成のブロック的な共重合体に比べて低反応度領域では小さく, 高反応度領域では大きかった。この共重合体のけん化反応を両単量体単位について検討することは両単量体の構造上の類似性のため困難であるが, 赤外吸収スペクトルの使用によって可能であった。その結果, ランダム共重合体では見かけ上, 両単量体単位の反応性はほぼ等しく, VAc単位の反応性は抑制され, VPr単位のそれは促進されることが示された。ブロック的な共重合体では, この傾向は弱く, VAc単位の反応が優先的に進むことが示された。以上の結果より, VAc-VPrのラジカル共重合体のすぐれた耐アルカリ性は主にそのランダムな構造によると考えた。