1973 年 30 巻 344 号 p. 737-741
種々の有機スズ化合物で安定化した可塑化PVCの人工促進試験と天然バクロ試験を行ない, 光劣化の程度をフィルム表面の外観変化と赤外吸収スペクトルの変化を測定した。有機スズ化合物のPVCに対する安定化能は, ジブチルスズマレエート類にあっては, マレイン酸アルキルエステルでメチル, ブチル, オクチル, オレイルなどの相互間に大きな効果の差は見られなかった。アルキル置換体にあっては, ジ-, モノ-, トリ-の順に効果が減少した。ジ-ブチルスズジラウレートとジ-ブチルスズアレエートは双方とも光劣化防止効果が大であった。
人工促進試験ではジ-ブチルスズマレエート類はPVCと弱い錯化合物を形成していると考えられる。この結合はテトロヒドロフランで切れ, ジエチルエーテルで比較的安定である。天然バクロ試験ではこのような錯化合物の形成は認められず, 人工促進試験と天然バクロ試験とではPVCの光劣化機構も異なっていると考えられる。