高分子試薬を用いるトルエンのニトロ化により得られるニトロトルエンのp-異性体/o-異性体の比 (p/o) を, 常法の混酸による場合のそれと比較した。高分子スルホン酸と硝酸によるニトロ化の際, 塊状のポリマーはp/oに変化を与えなかったが, 多孔性のイオン交換樹脂はp/oを増大させ, 最高のp/oは (アンバーリスト15使用の場合) 普通の揚合の0.69に対して1.83であった。ポリビニルァルコールあるいはセルロースの硝酸エステルは硫酸とともに用いてトルエンをニトロ化する能力を有し, かつp/oを増大させる (最高1.11) 。硝酸とポリ無水マレイン酸あるいはポリアクリル酸無水物との縮合物も同様の能力を有し, 小さいがP/o増大効果を有していた (最高0.86) 。反応媒体としてポリマーを共存させても, p/oには何ら変化を与えなかった。高分子触媒およびニトロ化剤によるこのようなp/oを増大させる効果は, 主としてオルト置換に対する立体障害によるものと思われる。