1975 年 32 巻 12 号 p. 717-723
広幅NMRにより尿素包接化合物中の1,3-ブタジエンの放射線後効果重合 (包接重合) について検討した. 得られた結果は前報のアクリロニトリルおよび塩化ビニルの包接重合と対比して考察した. 1,3-ブタジエンは尿素と1: 4のモル比で包接化合物をつくり, それは-15℃で分解する. 尿素包接化合物中の1,3-ブタジエンには, アクリロニトリルおよび塩化ビニルには認められないきわめて運動しやすい成分がある. 他の包接化合物中の1,3-ブタジエンの線幅はすべての温度域で塩化ビニルよりも広い. 尿素の線幅は塩化ビニルの場合よりも低温側から減少する. 重合は-78℃付近から顕著に起こり, 20℃に昇温するとすべての1,3-ブタジエンが尿素包接化合物中で重合する. 重合中は, アクリロニトリルや塩化ビニルの場合と同様に包接化合物中に生成した活性中心ヘモノマーが移動しながら重合する. カナルの尿素はポリマーになった周辺の尿素が崩れながら進行するアクリロニトリルや塩化ビニルの包接重合と異なり, 常に尿素のカナルが保持されたまま重合が進行し, ポリブタジエン-尿素包接化合物になる, その構造は六方晶系で, a=8.21, c=10.50Åの値を得た.