1988 年 45 巻 12 号 p. 945-952
アミロース・ヨウ素錯体の吸収及び円二色性 (CD) スベクトルに及ぼすI-濃度効果を, 広範囲のI-濃度領域 (0~2×10-2MKI) にわたり検討した. 600nm近傍にある錯体の最大吸収帯は, I-濃度の増加に伴い強度の増加及び短波長移動を示した. これに対応して観測される正負対称なCD帯は, 吸収と同様の挙動を示した. しかしながら, 光学異方性因子gmax及び最大吸収波長λmaxは, I-3の結合モル分率Rに対して直線的に変化し, R=0.5においてそれぞれ, gmaxは極小値及びλmaxは屈曲点を示した. R=1及びR=0.5における錯体のスベクトルに基づく波形解析により, 錯体には独立した3種のスベクトル種の存在が明らかとなった. 電子論的考察に基づき, これらのスベクトル種は独立した3種のヨウ素発色種. I2. I2, I2. I-3, 及びI-3. I-3と帰属された. その結果, I-濃度に伴う錯体のスベクトル変化は, 3種のヨウ素発色種の存在分布の変化に起因することがわかった.