53 巻 (1996) 8 号 p. 482-487
ポリ (フッ化ビニリデン) (PVDF) をシクロヘキサノン (c-HEXO) にPVDFの融点以上に加熱して溶解させた. 溶液は室温に放置し, 再度加熱 (85~130℃) すると均一の溶液となるが, 室温では系全体が一体化した熱可逆性のゲルとなる. ゲル化には処理温度の影響が見られた. FT-IRのATR法で溶液と溶媒の差スペクトルから溶液が徐々にゲル化していく過程を追い, PVDFのα型の特性バンド (795, 615, 532cm-1) が時間の経過とともにシャープになっていくのが観察された. 特に600~400cm-1の特性バンドのPVDFのコンホメーションの変化を時間ごとに追跡してみると, 溶解後, 40分経過するとその骨格構造に由来するスペクトル, 532および490cm-1のピークが現れ始めた. これらのピークの吸光度が相対的に増大すると系全体は一体化してゲルとなった. PVDFのc-HEXO溶液が室温になると生成する微結晶は主としてα型のコンホメーションを示しながら核を形成する. そして, さらにPVDFのオリエンテーションが進み, 成長してゲルの結節点を形成してゲル化するものと考えた. またこのゲルの融解熱はDSCによれば約18J/g (PVDF100%に換算, 試料のPVDFは60J/g) であり, ゲルを形成しているこの結晶は多量の溶媒を含みこんで安定化しているものと思われる.