抄録
長鎖アルキル基を有する両親媒性シクロデキストリン (CDx) とポリ塩化ビニル (PVC) との混合物を有機溶媒に溶かし, 水面上に展開することにより, CDx/PVCキャストフィルムを作製した. このフィルムをXPS分析したところ, 親水性のシクロデキストリン部はフィルムの一方の表面に配列していることが明らかとなった. このCDxキャストフィルムを軸キラルな1,1′-ビナフチル-2,2′-ジイルフォスファート (BNP) を含む水中に浸すことにより, フィルムの不斉選択性をXPSにより検討したところ, 単分子膜やLB膜で得られた知見と同様に, (S) -BNPが選択的にCDxフィルムに結合することが明らかとなった. この不斉認識には時間依存性が見られ, BNP水溶液にCDxフィルムを10分間, 1時間, および2時間浸した後でのXPS測定から, 1時間浸したときに最も高い不斉選択性が認められた. 2-ナフトエ酸ナトリウムをモデルとするFT-IRスペクトルによる検討から, BNP分子はその塩の形でPVCフィルム中のCDx空洞に包接され, この際に不斉が認識されるものと推論した.