2005 年 62 巻 8 号 p. 380-389
物理ゲルでも化学ゲルでもない第3のゲル, トポロジカルゲルは8の字架橋点で空間的 (位相幾何学的) な拘束により架橋する新しい高分子ゲルである. 大分子量のポリエチレングリコールに環状オリゴ糖であるシクロデキストリンが疎に充填されたポリロタキサンにおいて, シクロデキストリンどうしを8の字型に化学架橋して得られる. 環状分子が線状高分子に貫かれた状態で動くため環動ゲルとも呼ぶ. 8の字架橋点は高分子を自由に通して張力を均等に分配する, すなわち線状高分子に対して滑車のように振る舞う機能「滑車効果」をもつと考えられる. 実際のトポロジカルゲルは初期弾性率が特に小さく, また大変形に耐えて良く伸びる. 本研究では3-chainモデルに滑車効果を取り入れることでこの特徴的な弾性を理論的に記述した. 準弾性光散乱法による観察においては, 化学ゲルで観察される共同拡散モードに加えて, 新たなモード「スライディングモード」を観察した. また体積変化では化学ゲルを超える優れた膨潤性を確認した. さらにX線小角散乱法により体積変化過程でナノスケールの相分離構造を見いだした. これらの結果は超分子結合による滑車効果が種々の新物性に反映されたものと考えられる.