高分子論文集
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62 巻, 8 号
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  • 佐藤 浩太郎
    2005 年 62 巻 8 号 p. 335-351
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    本報では, 水に対して安定なルイス酸に基づく開始剤系の探索を行い, これまでに不可能とされてきた水系でのカチオン重合およびその制御, 官能基を有するモノマーのリビングカチオン重合が実現可能となったことについて述べる. ルイス酸として希土類ルイス酸を用い, 不均一な二相系での重合を行うと, 水中でカチオン重合が進行することが明らかになった. ここで, 重合は有機相中で進行し, 生長末端において水に対して安定な炭素-ハロゲン結合がルイス酸により活性化され重合が進行する. また, ルイス酸として三フッ化ホウ素錯体を用いると, 水と炭素カチオンとの反応によって生じる安定な酸素-炭素結合を選択的かつ可逆的に活性化することも可能であり, 均一系で多量の水存在下, 副反応なくリビングカチオン重合が進行することを見いだした. とくに, この開始剤系を用いると, フェノール性ヒドロキシル基を有するモノマーのリビング重合が保護基なしでも進行することについても明らかとなった.
  • スメクチック液晶ガラスと液体ガラス
    戸木田 雅利
    2005 年 62 巻 8 号 p. 352-361
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    ビフェニルジカルボン酸をメソゲンとする主鎖型液晶性高分子が形成するスメクチック液晶ガラスと液体ガラスの緩和挙動を比較した. 動的粘弾性測定でα緩和として現れるスメクチック液晶ガラスのガラス転移は, 層方向の緩和強度が層法線方向の3倍にもなる顕著な異方性を示す. また, 液晶のガラス転移温度は液体のガラスより約10K低い. エンタルピー緩和時間の温度依存性から, 液晶ガラスには一つのガラス温度TLC0が, 液体ガラスには二つの緩和モードに由来するガラス温度 (Tiso0L, Tiso0H) が存在することがわかった. Tiso0LTiso0Hより10K低く, TLC0と一致した. 剛直楕円体球分子に拡張されたモード結合理論から, Tiso0Lは分子の並進運動の凍結と, Tiso0Hは分子配向ゆらぎの凍結と関係あると考えた. Tiso0LTLC0の一致は, スメクチック液晶のガラス転移が層内のメソゲンの並進運動の凍結によることを示唆する.
  • 奥崎 秀典
    2005 年 62 巻 8 号 p. 362-372
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    導電性高分子材料の導電性とガス吸着性を組合せれば, 空気中で電場駆動する新規アクチュエータへの応用が可能である. 電解重合により作製したポリピロールフィルムが水蒸気の吸脱着により高速変形する現象を見いだし, 分子の吸脱着を直接, 回転運動に変換する高分子モーターを作製した. また, 数ボルトの低電圧印加によりフィルムが水蒸気を脱着しながら収縮することがわかった. 2V印加によりフィルムは6MPaの収縮応力を発生し, 60gの荷重を印加したときの出力密度は0.8W/kgであった. 応力-ひずみ曲線より算出した仕事容量は印加電圧とともに増大し, 3Vで48kJ/m3に達した. さらに, ポリピロールフィルムを折り曲げて作製したバネ状アクチュエータが, 2V印加により空気中で30%以上可逆的に伸縮することが明らかになった.
  • 金子 達雄
    2005 年 62 巻 8 号 p. 373-379
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    疎水性のメソゲン基の近傍に親水性のアクリル酸を共重合により存在させると, スメクチックA (SmA) 相の層構造秩序が増大し, 等方化温度が上がる現象が見られた. 乾燥状態で配向した繊維を水中に浸すことにより分子配向した液晶性ヒドロゲルを初めて作製した. 本ヒドロゲルは含水率の変化によりSmA相からスメクチックI (SmI) 相へ構造転移を示し, 続く延伸処理において逆のSmI-SmA構造転移を示した. さらに, 加熱時には40℃付近で同様のSmI-SmA液晶相転移を示した. そこで, 配向ヒドロゲルの片端を固定し, ゆっくりと昇温すると, 相転移温度付近で収縮挙動を示した. 構造と運動機能との相関を調べたところ, 液晶相転移とそのメカニクスには強い相関があることが見いだされた. 以上により, 液晶-液晶転移が等方化温度よりも低いことを利用し, 水中でかつ体温領域で運動性を示すアクチュエーターを作製することができた.
  • 奥村 泰志
    2005 年 62 巻 8 号 p. 380-389
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2010/03/15
    ジャーナル フリー
    物理ゲルでも化学ゲルでもない第3のゲル, トポロジカルゲルは8の字架橋点で空間的 (位相幾何学的) な拘束により架橋する新しい高分子ゲルである. 大分子量のポリエチレングリコールに環状オリゴ糖であるシクロデキストリンが疎に充填されたポリロタキサンにおいて, シクロデキストリンどうしを8の字型に化学架橋して得られる. 環状分子が線状高分子に貫かれた状態で動くため環動ゲルとも呼ぶ. 8の字架橋点は高分子を自由に通して張力を均等に分配する, すなわち線状高分子に対して滑車のように振る舞う機能「滑車効果」をもつと考えられる. 実際のトポロジカルゲルは初期弾性率が特に小さく, また大変形に耐えて良く伸びる. 本研究では3-chainモデルに滑車効果を取り入れることでこの特徴的な弾性を理論的に記述した. 準弾性光散乱法による観察においては, 化学ゲルで観察される共同拡散モードに加えて, 新たなモード「スライディングモード」を観察した. また体積変化では化学ゲルを超える優れた膨潤性を確認した. さらにX線小角散乱法により体積変化過程でナノスケールの相分離構造を見いだした. これらの結果は超分子結合による滑車効果が種々の新物性に反映されたものと考えられる.
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