甲子園短期大学紀要
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消費者相談から見る消費社会の変容と消費生活センターの役割 その1
-相談統計と設立当初(1970年代)の消費者相談の検討-
神澤 佳子
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2014 年 32 巻 p. 37-49

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抄録

要  旨 本稿では、消費生活センターの設立経緯と消費生活相談統計及び奈良県消費生活センターの設立初期(1970年代)の相談事例の検討結果について報告する。消費生活センターは1965年に兵庫県に最初に設置され、苦情相談、商品テスト、消費者教育など消費者団体が行っていた事業を取り込み、行政サービスとして提供するようになった。現在、消費生活センターは全国に724カ所、年間相談件数は852,649件である(2012年度)。40年間の相談統計からは,件数は32倍に増加し、相談内容は問い合わせ相談から苦情相談へ、商品からサービスへ、安全品質問題から契約取引問題へと中心が移ったことがわかった。商品の安全品質に関する情報を求める相談から、契約取引に関する紛争解決の支援を求める相談へとシフトしている。消費生活センター設置初期の1970年代の相談事例からは、家庭の主婦が日常生活の疑問について問い合わせる相談が多数を占め、消費生活センターは商品テストを行うなどして「科学的」根拠に基づく情報提供を行っていた。そこには、合理的に商品選択のできる「賢い消費者」を育成するという教育的な意図がうかがわれる。企業に対しては事業活動の適正化を促す指導的な働きかけを行っていたという特徴が見いだされた。

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