2019 年 40 巻 p. 160-177
「察し合い」は、日本語の配慮言語行動の基盤にあるものであり、日本の曖昧な文化の一部分である。これまでに、「察し合い」の談話展開に見られる日本語の配慮言語行動にはすでに言及されているが、本研究においてロールプレイのデータを比較した結果、日本語母語話者間と中国語母語話者間で聞き手側の期待する配慮言語行動が異なることが分かった。さらに、日本語と中国語の依頼に対する断りの談話展開に見られる配慮言語行動の特徴、および、文化コンテクストとの関係性が明らかとなった。日本語の配慮言語行動は、多くの言葉に頼らず、定型的な表現によって相手に結論を推察してもらおうとする「察し合い」が特徴であり、それは高コンテクスト文化に属する「察しの文化」を反映している。それに対して、中国語の配慮言語行動は、言葉に頼る情報提供や論理的説明によって相手に結論を納得させようとする「話し合い」が特徴であり、それは低コンテクスト文化に属する「言葉の文化」を反映している。