ことば
Online ISSN : 2424-2098
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最新号
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巻頭言
武蔵嵐山ワークショップ
研究発表要旨
40号記念
個人研究
  • ―なぜ静岡方言は使用されにくいのか?―
    熊谷 滋子
    2019 年 40 巻 p. 18-35
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    方言がフィクションで利用されることはよくあるが、具体的な作品をみてみると、今でも標準語や「女ことば」が中心に用いられ、さらに方言使用にも序列があることが分かる。東北、関西、そして静岡を舞台とする地域ドラマと内田康夫の旅情ミステリー作品を対象に、方言がいかに表象されているのか調査した結果、関西方言は主要な役を含め、出身者でなくとも用いることもあるほど肯定的に描かれている。一方、東北方言は田舎のイメージを引き出すために端役中心に用いられる程度で、静岡方言にいたってはさらに限定的で、全く使用されないことが多い。静岡という地域のイメージがそれほど田舎性を帯びていないのに、具体的な静岡方言が田舎のイメージをもっているため、使用が制限されていると思われる。方言は地域アピールとして有効な場合に限り使用されることが分かった。このようにして、フィクションでの使用・不使用を通して方言イメージが再生産されていく。

  • ―「ハラスメント語」を考える―
    佐々木 恵理
    2019 年 40 巻 p. 36-53
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    1980年代にセクシュアルハラスメントの概念が日本に導入され、短縮語の「セクハラ」はハラスメントの実態を一気に広めることに貢献した。その後、セクシュアルハラスメントの「ハラスメント」が切り取られて、多くの造語(ハラスメント語)が作られてきた。ハラスメント語には、セクシュアルハラスメントの中心的な概念である人権や差別の告発をすることばがある。また、不快感や配慮不足を表すことばや本来のハラスメントの意味を持たない記号化したことばも作られて、「ハラスメント」は乱用されている。今後もハラスメント語は増殖し続けるかもしれないが、さまざまな事象を「ハラスメント」という用語で表現するべきではない。作り出したことばは力(権力)を持つことを意識しながら、告発する新たなことばを探したい。

  • 佐竹 久仁子
    2019 年 40 巻 p. 54-71
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    絵本というメディアでは、主人公に男が多いことや男女の描かれかたに違いがあることなど、ジェンダーバイアスが存在することが先行研究により指摘されている。本稿では、これに加えて、登場キャラクターのことばづかいの性差も大きいことを、自称代名詞と文末形式の調査から明らかにした。それは、日本語概説書などでとりあげられる「ことばの男女差」どおりのものである。絵本のジェンダーバイアスはことばにも存在し、絵本はこどもに日本語の〈女ことば/男ことば〉規範を教えるメディアとなっているといえる。

  • ―相手言語接触場面と第三者言語接触場面の談話分析から―
    髙橋 美奈子, 谷部 弘子, 本田 明子
    2019 年 40 巻 p. 72-89
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    日本語が「第三者言語」として使用される機会が増えている現在、第三者言語接触場面における実証的な研究の必要性は高い。本稿では、実態と意識との乖離が指摘されているジェンダー規範を取り上げ、日本語学習者がどのようなジェンダー規範意識をもっているのかについて、相手言語接触場面と第三者言語接触場面を比較し明らかにする。分析に使用したデータは、留学生の日常談話データおよび意識を明らかにするための半構造化インタビューである。結果として、学習者は来日前から日本語のジェンダー規範についての知識があり、規範を肯定的にとらえていた。しかし、実際の言語使用においては、意識と異なり、規範にとらわれない自由な言語使用がみられた。中には、第三者言語接触場面より相手言語接触場面での方が日本語のジェンダー規範を順守しようとする言語使用もあった。学習者のもつ規範意識と実際の言語使用との複層性にどう向き合うか、日本語の教育に携わる者の意識が問われている。

  • ―「女子力」を巡る記述における言語標識を中心に―
    馬 雯雯
    2019 年 40 巻 p. 90-105
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究は「女子力」を巡る記述における言語標識に焦点を当て、「女子力」ということばを考察するものである。分析に際し、まず、「女性」「女子」「女の子」に接尾辞の「らしい」「っぽい」が結び付いた言語標識を軸に、「女子力」にみられるジェンダーの要素の分析を試みた。そして、「できる」「優れている」「得意」「上手」といった動詞および形容詞を軸に、「女子力」にみられる能力の要素を探ってみた。その上で、「女子力」の使用の様相について男女別に分析を試みた。「女子力」は「女性らしさ」を構築する動的なプロセスを可視化し、「女性らしさ」のありかを示していることばである一方、「能力」としてその形式の「女子」に表われるジェンダーの境界線を越え、「男性」のジェンダー領域にも入っていることばであること、「女子力」の使用において、女性はそれを「ほめ」の効果のあることばとして同性に使うが、男性はそれを「冗談としてのほめ」の効果のあることばとして同性に使うことを明らかにした。

  • 小林 美恵子
    2019 年 40 巻 p. 106-123
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    女性文末助詞「わ」「かしら」不使用など、日本語の中性化がいわれているが、作家性が反映するTVドラマや映画では、自然談話よりも女性・男性形式の使用が残っているという。しかしこれらの分野でも、現実の影響を受けた作家性の変化や、観客に受容されるリアリティから、通時的にみれば中性化は進んでいる。

    映画『何者』の文末形式や、丁寧体の使用、若者ことばなども中性化してきている。一方、一部の男性文末助詞や「すげー」「ねー」などの音変化、人の呼び方などについては、男女差があいかわらず残っているが、それらは自然談話の状況とほぼ一致し、実際の話しことばを反映しているといえる。

  • 加藤 恵梨
    2019 年 40 巻 p. 124-141
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は、二人称代名詞「あなた」「あんた」「おまえ」「きみ」を『日本語日常会話コーパスモニター公開版』によって調査し、現代日本語の話しことばにおける4語の使用者数・使用回数および使用対象を明らかにすることである。調査の結果、4語の中で「あなた」の使用者数が最も多かったが、全体的に4語の使用者数および使用回数は少なかった。また、男女別にみると、男女間で4語の使用者数・使用回数および使用対象に大きな違いはなかった。さらに、先行研究で相手への指示・批判として「あなた」が使われることが多いと指摘されているが、今回の調査では多くみられなかった。

  • ―依頼の対象物への認識・理解を確立する手立てをめぐって―
    李 欣穎
    2019 年 40 巻 p. 142-159
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    本稿では、自然会話に生起する依頼の相互行為において、依頼者が依頼の対象となる物に言及して相手と共有する話者のターンの組み立て方を分析対象とし、依頼の展開でその共有化作業がどのような手立て・言語的資源によって組織されるかを明らかにすることを目的とする。

    分析の結果として、依頼を展開するにあたり、①依頼の対象物への認識要求、②認識用指示試行、③描写・説明の形による対象物の提示、という3つの手立てが利用可能であり、どのような手立てが選択されるかは、被依頼者が、当の対象物に対する既存の共有知識の有無という「依頼者の想定」に応じて、「被依頼者に合わせた発話デザイン」で決まることを示した。最終的に、各手立ては、依頼の本題行為を行うための「準備」として、相互行為で言及される当の対象物に対する被依頼者の認識・理解の問題に対処するために利用できるものであることを明らかにした。

  • ―日本語と中国語の対照研究の観点から―
    高 揚
    2019 年 40 巻 p. 160-177
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    「察し合い」は、日本語の配慮言語行動の基盤にあるものであり、日本の曖昧な文化の一部分である。これまでに、「察し合い」の談話展開に見られる日本語の配慮言語行動にはすでに言及されているが、本研究においてロールプレイのデータを比較した結果、日本語母語話者間と中国語母語話者間で聞き手側の期待する配慮言語行動が異なることが分かった。さらに、日本語と中国語の依頼に対する断りの談話展開に見られる配慮言語行動の特徴、および、文化コンテクストとの関係性が明らかとなった。日本語の配慮言語行動は、多くの言葉に頼らず、定型的な表現によって相手に結論を推察してもらおうとする「察し合い」が特徴であり、それは高コンテクスト文化に属する「察しの文化」を反映している。それに対して、中国語の配慮言語行動は、言葉に頼る情報提供や論理的説明によって相手に結論を納得させようとする「話し合い」が特徴であり、それは低コンテクスト文化に属する「言葉の文化」を反映している。

  • ―In Reference to the First Person Pronouns in Natsume Soseki’s Letters―
    れいのるず秋葉 かつえ
    2019 年 40 巻 p. 178-195
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    明治維新は、社会組織の基盤をひっくり返すような革命的な変革であった。階層や職業によって人がタテに配置されその上下関係の価値だけがことさらに強調される歴史のなかで発達した言語は、自由と平等の民主主義を理念とする欧米型の近代社会では機能しない。英語を国語にしようという考えが持ち出されるほど、日本語は混乱した。日本語をどうするか? それが維新の子供たち―維新を担った武士たちの子供の世代に属する文学者たち―にとっての第一の課題であった。

    欧米のような近代文学の伝統をつくりあげるために、言文一致運動がはじまった。幕末の勤王運動の思想的リーダー、吉田松陰を維新の子供の一人夏目漱石と比較すると、連帯原理の自称詞「僕」が、漱石時代の自称詞の主流になり、そこを定点に「言文一致体」が出来上がったことがわかる。Auto/Biographical Researchの考え方にしたがって漱石の書簡の文体を観察していくと、漱石がイギリス留学に際して「言文一致の会話体」を宣言し、実践した事実が見えてくる。

  • 遠藤 織枝
    2019 年 40 巻 p. 196-213
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    外国人介護従事者の介護用語習得の負担を減らすためだけでなく、介護業務の事務処理軽減化のためにも、介護用語の平易化と標準化は進めなければならない。その観点から、わかりにくく難解な介護用語の見直しが必要で、本稿では、介護の場で使われる漢字語で、国語辞典に記載される本来の意味とは違う意味用法の用語と、比較的新しく造語された語のそれぞれのわかりにくさと難解さを検証した。いずれも耳で聞いてわかりにくく、漢字からの類推もしにくい用語であり、この種の語彙は、介護の場以外の人には理解が難しいことが明らかになった。

  • 斎藤 理香
    2019 年 40 巻 p. 214-226
    発行日: 2019/12/31
    公開日: 2019/12/31
    ジャーナル フリー

    1980年代以降に発表された「反省的女性史」は、婦人運動家や思想家、さらには銃後の役割を担った女性たちの戦争協力という加害性をあぶりだすことを可能にした。本論は、そういった加害性から導かれる、戦争への「主体的」「能動的」と目される態度や行動の意味を「国民化」状況、すなわち個人に「権力」が及ぼされる状況において、「中動態」という概念を導入して検討した試論である。「中動態」とは、言語学で用いる能動態―受動態という対立概念が成立する以前に存在していた、能動態と対をなす概念である。中動性は、近代における行動基準として自明とされる主体性や意志の介在しない行為や事態において見出される。この概念を用いることによって、戦前・戦時のフェミニスト、一般の女性、支配者の間で、戦争責任の質的な分別が可能になる。ただし、中動性が女性たちの戦争責任を免罪するわけではないことも併せて提唱したい。

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