本稿では、行為要求表現「勧誘」において「聞き手意志」が文末形式にどのように関連しているかを考察し、聞き手の意志をめぐる観点が文末形式の使い分けの説明に有効であることを示す。具体的には以下の2点を論じる。①「聞き手意志配慮」の観点から勧誘の位置づけと主な文末形式について述べ、聞き手意志配慮と文末形式との対応関係を示す。②「聞き手の意志をめぐる文脈的条件」が勧誘を表す文末形式の使われ方にどのような影響を与えているのかを考察し、意志疑問形「しようか」には先行研究の指摘や予測の範囲を超える事実が見られることを指摘する。そして、勧誘表現の「しようか」は「話し手と聞き手が一体化される」環境を必要としており、融合度が最も高い「一体型勧誘」として特徴づけられること、下降イントネーションで発話される肯定疑問文「するか↓」は「しようか」と全く同じ傾向を示していることを主張する。