ことば
Online ISSN : 2424-2098
Print ISSN : 0389-4878
個人研究
日本語二人称「君」の歴史言語学的研究
A historical study of Japanese second person pronoun kimi
れいのるず秋葉 かつえ
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2021 年 42 巻 p. 54-71

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抄録

欧米言語学研究においては、人称代名詞は比較的安定したカテゴリーで、歴史的に変化することが少なく、他言語からの借用もほとんど例がないとされてきた。しかし、代名詞の変化・借用の例はないわけではない。とくに、日本語の人称詞は、ほとんど常に変化してきたし、中国語からの人称詞の借用の例も数えきれない。ここでは、現代日本語の二人称代名詞である「君」が、かつては「君主」の意味を持つ名詞であったこと、江戸後期実証学的儒学者たちの間で対等関係の二人称として漢語「足下」が使われるようになり、さらに国学者たちの間で「君」が「二人称」として使われるようになったことを書簡例によって検証する。明治期には自称詞「僕」に対応する二人称として文化的上流階級の間で広がったが、「僕」ほどには一般に広がらず、現在では、目下・年下・女性に対して使われる傾向が見られ、「君」がメジャーな二人称として存続する可能性は少ないと推測される。

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© 2021 現代日本語研究会
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