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個人研究
大正ロマンの生んだフェミニスト:山田わか・嘉吉の協働と思想(その12)
斎藤 理香
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2022 年 43 巻 p. 165-179

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抄録

山田わかについての代表的評伝研究である山崎朋子『あめゆきさんの歌:山田わかの数奇なる生涯』(1978)は、山崎自身が「底辺女性史」3部作の一つと銘打つ、いわゆるエリート女性史に対抗する作品とされる。一方、筆者は、1990年代以降の「反省的女性史」、すなわち戦時の女性も行動主体として戦争に積極的に加担したとする歴史観をふまえ、山田わかを母性保護を唱道する「分離型」のフェミニストとして考察し、また戦時フェミニズムの一翼を担ったことの責任と加害性にも言及してきた。日本の女性史およびフェミニズム研究において階級への視点は重要だが、「底辺」かどうかより行動主体としてのフェミニズムへのかかわり方のほうに注目すべきだろう。今後は、「キャメロン・ハウス」で同胞女性と施設スタッフの仕事をサポートした1900年代のわかの活動記録をさらに掘り起こし、同施設でわかと同様の活動を行った中国人女性に関する研究との比較も行っていきたい。

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© 2022 現代日本語研究会
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