2022 年 43 巻 p. 147-164
本稿は、中国語友人同士のオンラインやりとりにおける、遊びの叩き合いとしての「互怼(“Hudui”)」を取り上げ、それがどのように実践されているかを記述し、さらに「互怼(“Hudui”)」を通して中国語の対人コミュニケーションを論じるものである。その結果、「互怼(“Hudui”)」連鎖には、①“initial”と“counter”というペアとしてのやりとり、②記号資源の形態は異なるものの、“counter”の発話では、参与者が先行文脈における“initial”の発話をエスカレートして返していること、③対を為し、(絵文字、GIFを含む)多様な記号資源によって共同構築されている、という3点の特徴があることを明らかにした。また、中国の社会文化的コンテクストの中で日常的に生起するこうした「叩き合い」の背後には、「親しき仲こそ礼儀なし」という中国社会の対人コミュニケーションの規範性の存在の可能性があることを論じた。