本稿は、東日本大震災における被災地・被災者の現状とそれに対する災害ボランティアの関わり方について議論をおこなっている。東日本大震災の被災地は、一義的な中心-周辺という二項対立構造で理解することができない。被害の範囲・被災地の地政学的特性などの空間的側面や、被災経験によるコミュニケーション不全などにより、中心-周辺の分断線は複雑化している。復興において誰/どこが中心で、誰/どこが周辺に追いやられているのかは、立場や場面、状況などに応じて異なってくる。つまり、問題が起因する構造が潜在化してしまい、自分にとって望ましい復興のあり方を見いだすことが難しくなっている。
このような状況の中で、被災地・被災者は被災によって崩壊した社会的ルーティンを回復させる必要が生じる。なぜならば、被災とは、「今日あることは明日もある」という日常生活を支える自明性の崩壊として経験されるからである。したがって復興とは、この自明性の再創造を意味している。
外部者であるボランティアが復興に関わるということは、被災地・被災者と一緒にこの自明性を再創造することである。再創造のためには、現象学的社会学でいうところの時間的継続性への信頼を回復する必要がある。さらに、この時間的継続性を回復させるためには、反復可能性の理念化を実現させる必要がある。例えば、ボランティアが「またきますね」という約束を,ちゃんと果たすということは、自己と大切な他者との関係性は儚いものではなく、反復しうるものとして理念化されていき、時間的持続性への信頼を生み出すきっかけとなるのである。