フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
論文
過去の職業経歴が高齢期のボランティア参加に与える影響
―性差に着目した分析―
伊達 平和
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2018 年 17 巻 p. 19-32

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抄録

ボランティア参加行動の研究では、社会経済的資源がボランティア行動に影響すると考える資源理論が検証されてきたが、未だに論争的となっている。また、高齢期のボランティア行動を対象とした研究は乏しく、基本的な分析視角である性差も明らかになっていない。さらに、近年のボランティア参加行動の議論では、資源理論の中では、女性のほうが男性よりも職業の影響が強いとする性同一性波及(Gender-identification Spillover)仮説が注目されている。そこで本稿では、高齢者を対象として、資源理論の中でも職業の効果について、性差に着目して明らかにする。その際、分析対象が高齢者であることを考慮して、これまで最も長くついた職業を表す「最長職」とボランティア参加行動との関連を検討する。

分析の結果、第1に、女性では現職ではなく最長職が関連しているが、男性では現職も最長職も共に関連する。第2に、女性では最長職「ブルーカラー」と「農業」に対して「専門・管理職」がボランティアに参加しやすいが、男性では「専門・管理職」だけでなく「事務・販売職」もボランティアに参加しやすい。第3に、女性の方が男性よりも「専門・管理職」であれば、ボランティアに参加しやすく、性同一性波及仮説が成立することが明らかになった。以上の知見より、高齢期において、資源理論は職業という側面において重要であること、また最長職に焦点を当てることの重要性が示された。

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© 2018 関西社会学会
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