2025 年 24 巻 p. 153-167
近年の積極的労働市場政策に関する研究では、労働市場において脆弱な立場にある人々への支援のためには雇用政策に雇用主を関与させることが有効であることが指摘されている。本論文では、大阪府内自治体を対象とした質問紙調査と聞き取り調査のデータに基づき、以下の2つのリサーチ・クエスチョンを設定して、大阪府内自治体が生活困窮者自立支援事業において自治体施策への「雇用主の関与」を促進するための事業実施体制をどのように構築しているかを明らかにした。【RQ1】「大阪府内自治体は雇用主の関与を促す支援メニューをどのくらい実施しているか」に関しては、多くの自治体で実施されているのは「空きポスト補充中心アプローチ」であるとはいえ、大阪府の少なくない自治体が企業と連携して就労支援事業を実施していることがわかった。【RQ2】「自治体施策に雇用主を関与させるための実践上の工夫と課題は何か」に関しては、豊中市とAʹワーク創造館の事例を中心に分析した。分析の結果、「候補者中心アプローチ」が求職者のみならず雇用主に様々な「利益」をもたらしうることが明らかになった。このアプローチを採用しているのは一部の自治体に限られているが、他の自治体でもこのアプローチの「萌芽」が確認された。最後に、「候補者中心アプローチ」の可能性と、このアプローチが他自治体へと広がっていく際の課題について論じた。