フォーラム現代社会学
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Print ISSN : 1347-4057
小特集 戦争社会学の可能性と課題―岩波シリーズ『戦争と社会』を手掛かりに―
自衛隊退職者を媒介とした自衛隊と社会の関係の検討可能性
―戦後日本の「特殊性」とポストモダン・ミリタリー論のはざま―
津田 壮章
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2025 年 24 巻 p. 205-213

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抄録

本稿は、『シリーズ 戦争と社会2』の第二部「自衛隊と社会」(以下、本書とする)掲載論文を題材に、自衛隊と社会の関係を対象とする研究の到達点と今後の展望を示すものである。本書の特徴として、「市民社会を意識する軍隊という社会と、これを注視する市民社会」(一ノ瀬・野上2022: 16)という視座を提示し、自衛隊に内在する論点を検討する学術的価値を示したことが挙げられる。ただし、自衛隊の「軍事組織の文化」や「軍隊という社会」自体に踏み込む研究は未だ少なく、その手法の困難さも含めて発展途上といえる。

本稿では、軍事に関する戦後日本の「特殊性」を踏まえ、チャールズ・C・モスコス(Charles C. Moskos)の提起したポストモダン・ミリタリー論を参照する。ポストモダン・ミリタリー論が受容される文脈を踏まえたうえで、自衛隊の「特殊性」を前提としたポストモダン・ミリタリー論への当てはめや差異の検討にとどまらない論点を見出すため、自衛隊退職者に着目する。

自衛隊退職者は戦後日本の「特殊性」の影響を強く受けてきた。それに対する反発や諦め等、反応は様々であるが、自衛隊の「軍事組織の文化」を経たことによる戦後日本社会や自衛隊への認識は、一つの集団としても、個々の経験としても、組織の歴史としても、自衛隊と社会の関係に関する研究上の可能性を秘めている。

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