フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
特集Ⅰ 人口減少社会に生きる/ 活きる社会学
持続可能な家族政策・労働政策としての育児休業
中里 英樹
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2025 年 24 巻 p. 88-101

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抄録

本稿では、日本における育児休業制度が人口減少社会の課題にどう応じるかを検討している。特に、男性の育児休業取得率が2023年度に30%を超えた点が注目される一方で、取得期間の短さや、男性の取得が女性のキャリア中断の短縮に繋がらない点が課題として挙げられる。また、公的保育制度との接続が不十分であり、制度設計の改善が求められている。

さらに、日本の育児休業制度は雇用保険を財源とするため適用範囲が限定されており、自営業者や同性カップルなどが対象外となっている。このような包摂性の欠如に加え、男性の取得率や取得期間の増加に伴い、育児休業給付総額がさらに増大する可能性が指摘されており、持続可能性の観点からも課題となっている。

一方、ヨーロッパ諸国では、ジェンダー平等を目指した「パパ・クオータ」の導入や、育児休業と保育制度の統合的設計が進められている。本稿は、日本においてもジェンダー平等や社会的持続可能性を実現するため、包摂性を高めつつ、育児休業制度と保育制度の総合的な見直しが必要であると結論づけている。

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