2015 年 2015 巻 62 号 p. 160-165
2009年4月,東京都青梅市のウメに発生したウメ輪紋ウイルス (Plum pox virus) の拡散防止を目的として,媒介虫であるアブラムシ類の発生消長を調査し,春季における防除対策を検討した。東京都青梅市における有翅アブラムシの飛来は,1~3月にはすでに認められ,その後,4~6月,7~8月,10月下旬~ 12月上旬の年3回のピークがみられた。ウメ樹上での寄生は,年2回大きなピークがあり,1回目は2月下旬に越冬卵から幹母の孵化により始まり,4月上旬より主にウメコブアブラムシの無翅虫が急増し,4月下旬からはムギワラギクオマルアブラムシの寄生が6月まで継続した。2回目は,10月中下旬に有翅アブラムシが飛来,産卵雌を産仔,その後飛来する有翅雄との交尾により12月上旬まで産卵が行われた。春季の薬剤防除では,4月から増加する無翅虫を対象に行われていた慣行防除に対して,幹母をターゲットに萌芽期から満開期 (3月上旬~3月中下旬) までの間に1回の散布を行うことで,最長で38日間アブラムシの寄生を低密度に抑制できた。また,4月下旬以降に葉巻き症状を引き起こす種に対しては,アセタミプリド水溶剤およびチアクロプリド水和剤の2剤が即効的かつ高い効果を示した。