関東東山病害虫研究会報
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2015 巻, 62 号
選択された号の論文の44件中1~44を表示しています
特別講演
  • 小林 正伸
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 1-5
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    ダイコンわっか症は,神奈川県三浦半島では1986年に最初の発生記録が残っており,それ以降問題になった障害と考えられる。葉に発生した白さび病菌を根部に接種すると病徴が再現された。また,わっか症の内部にはAlbugo属菌の菌糸と吸器が観察され,培養すると分生子と卵胞子が形成されることから,ダイコン白さび病菌 (Albugo macrospora) が根部に感染した症状であると考えられた。ダイコン白さび病菌の発生生態の解明のため,ダイコンを周年栽培し,胞子の形成を調査したところ,葉では10月から翌年の8月上旬まで分生子の形成が確認されたが,卵胞子は確認されなかった。わっか症は10月下旬より翌年の7月まで発生が認められるが,自然状態では胞子の形成はほとんど認められず,採種時期まで栽培を継続すると4月,5月にわっか症内部に分生子と卵胞子が形成された。一方,採種時期には花,花茎,鞘に白さび病が発生し, 分生子及び卵胞子が多数形成される。これらのことから,ダイコン白さび病の第一次伝染源としての卵胞子は,種子から供給されると推測された。葉での白さび病の発生と根でのわっか症の発生については品種間差が認められ,特に青首系以外の品種では葉での白さび病の発生は少なく,わっか症の発生は認められなかった。薬剤防除では,卵菌類に効果の高い剤を中心に,2015年6月1日現在,6剤がわっか症に対する登録を取得している。

報文
病害の部
虫害の部
  • 平江 雅宏, 柴 卓也
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 110-115
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    水田においてヒメトビウンカの発生消長を簡易に調査するため,黄色粘着トラップの設置条件を検討した。その結果,設置する粘着板の上辺の高さをイネの移植直後は40cmに,その後は生育に合わせて草冠高より20cm程度低くなるよう調節することが適切であると考えられた。水田内におけるトラップの設置位置については,畦畔からの距離により誘殺数に大きな差は認められず,畦畔から1~20mの範囲で発生消長の調査に必要な個体数が誘殺されると考えられた。また,このような条件で水田内に設置した黄色粘着トラップにおける誘殺消長は,捕虫網でのすくい取りにおける捕獲消長とほぼ同様であり,有効積算温度による発生ピーク予測日とも概ね一致したことから,本手法は水田におけるヒメトビウンカの発生消長の把握に利用できると考えられた。特に,本種の本田への飛び込み時期にあたる6月において,本手法による誘殺数はすくい取り法による捕獲数よりも多かったことから,本手法は水田への侵入時期の把握に有効であると考えられた。

  • 小倉 愉利子, 藍澤 亨, 島田 景
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 116-118
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    群馬県内3地点の水田ほ場において,ヒメトビウンカに対する3種の育苗箱施用剤の防除効果を調査した結果,フィプロニル処理区ではヒメトビウンカの防除効果が認められず,ヒメトビウンカに対するフィプロニルの効果が低下していると考えられた。また,PCR-RFLP法により,GABA受容体RDLサブユニットのA2’N変異を有するヒメトビウンカが県内全域から検出され,フィプロニルに対して抵抗性を有する個体が県内に広く分布している可能性が示唆された。

  • 石崎 摩美
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 119-121
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    Occurrence of second generation larvae and eggs of rice skipper was investigated on purple rice variety Purple rice of NARO Institute of Crop Science (Purple rice) and forage rice cultivar‘Momiroman’, latetransplanted in a paddy field. Number of eggs on leaves of the two varieties did not differ significantly, whereas number of larvae on Purple rice was significantly less than that on‘Momiroman’. Survival rate of newly hatched larvae was investigated by a laboratory rearing experiment using leaves of the two varieties. Half of the larvae on Purple rice leaves had left the leaves within 24 hours, whereas most larvae on‘Momiroman’leaves stayed on the leaves after 24 hours. It is possible that the Purple rice plant is not a suitable food for newly hatched larvae.

  • 春山 直人, 中澤 佳子, 松本 華苗, 福田 充
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 122-124
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    薬剤 (4成分5薬剤) のトマトポット苗への土壌処理による,タバココナジラミの殺虫効果とトマト黄化葉巻ウイルス (TYLCV) の媒介抑制効果について調査した。薬剤処理後,一定期間 (1時間,5日,15日,25日) が経過したトマトポット苗に,TYLCV 保毒タバココナジラミ (バイオタイプQ) を接種し,その後の感染株率を調査した。その結果,本試験の供試薬剤によるタバココナジラミの補正死虫率は処理5日後に高くなり,TYLCV 媒介抑制効果は15日後または25日後に高くなる傾向にあった。ニテンピラム粒剤およびジノテフラン粒剤では,薬剤処理の25日後であっても,保毒虫接種による感染株率はそれぞれ0%,4.2%と低く,他の供試薬剤 と比較して,媒介抑制効果および残効性に優れると考えられた。また,シアントラニリプロールでは,水和剤灌注処理25日後の感染株率は45.8%となり,15日後 (12.5%) と比べ約3.7倍に上昇していたのに対し,粒剤の株元処理では処理25日後でも感染株は増加しなかった。このことから,同成分では水和剤灌注処理と比べ粒剤処理の残効が長いことが示唆された。

  • 日本 典秀, 長坂 幸吉, 後藤 千枝, 小原 慎司, 手塚 俊行
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 125-129
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    Thrips-control ability of the mirid bug Nesidiocoris tenuis (Reuter) was investigated against Thrips tabaci Lindeman on cucumbers grown in greenhouses. In 2013, the cucumbers were transplanted in August, and the bugs were released three times with seven-day intervals at the density of 0.5 bugs per plant. In 2014, the bugs were released four times on the cucumbers transplanted in March in the same manner as in 2013. In both trials, the density of thrips on cucumbers was significantly reduced in the bug-released greenhouse.

  • 櫻井 民人, 冨髙 保弘, 安部 洋, 津田 新哉
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 130-132
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    ミナミキイロアザミウマThrips palmi Karnyによるメロン黄化えそウイルス (Melon yellow spot virus, MYSV) 媒介性を効率的に評価するための簡易検定法を開発した。この方法は市販の植物組織培養用プラントポット (72×72×200mm) を用い,そこに植栽したキュウリ幼苗に検定虫を隔離してその後の発病状況を観察するというものであり,特殊な機械や試薬を使わず簡易に多くの供試虫を処理することができる。この方法を用いて調査したミナミキイロアザミウマ成虫のMYSV媒介率は,株あたり1頭放飼では雌で23.8%,雄で31.0%であり,株あたり5頭放飼および株あたり20頭放飼ではすべての供試苗が発病した。株あたり1頭放飼処理について実施した供試苗のDAS-ELISAの結果は,本法で得られた媒介率の値と一致した。本法により,野外採集虫のMYSV媒介性や,ミナミキイロアザミウマの宿主である野菜・雑草類および育成したMYSV抵抗性品種の虫媒感受性等を簡便に評価することが可能である。

  • 吉澤 仁志, 櫻井 まさみ, 日戸 正敏, 石井 隆志, 漆原 寿彦, 森 光太郎
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 133-137
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    促成栽培イチゴにおいて,アカメガシワクダアザミウマ (以下,アカメガシワとする) 放飼によるアザミウマ類に対する防除効果を検討した。2013年2~5月および2013年11月~2014年5月の2回試験を実施した結果,アザミウマ類が未発生の条件で11月中旬および3月上中旬に各1回ずつ,計2回アカメガシワを放飼することで長期にわたり効果的にアザミウマ類を抑制できる可能性が示唆された。また,アカメガシワを放飼することにより,アザミウマ類に対する薬剤の散布回数を大幅に減らせる可能性も示唆された。

  • 横山 朋也, 佐藤 信輔, 鹿島 哲郎
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 138-140
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    イチゴに登録のある5種類の薬剤について,茨城県内にて採集した3個体群のヒラズハナアザミウマに対する殺虫効果をインゲンマメ葉片浸漬法により調査した。その結果,採集地点間で殺虫効果に差が認められ,園芸研究所 (笠間市) 内で試験ほ場に隣接せず,薬剤による淘汰圧の低い雑草地のシロツメクサから採集した個体群に比べ,鉾田市内および行方市内施設栽培イチゴから採集した個体群に対する殺虫効果は低かった。また,いずれの薬剤も,園芸研究所内個体群に対する殺虫効果は高かったことから,県内には一部薬剤に対して抵抗性の発達したヒラズハナアザミウマが存在することが明らかになった。

  • 井上 麻里子, 岡部 克, 小河原 孝司
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 141-143
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    茨城県内のコナガに対する薬剤の殺虫効果を明らかにするため,2014年11月に古河市,八千代町,鉾田市のアブラナ科露地野菜圃場からコナガ成虫を採集した。採集次世代のコナガの3齢幼虫を供試し,10種類の薬剤の殺虫効果をキャベツの葉片浸漬法により検定した。その結果,ジアミド系薬剤のクロラントラニリプロール水和剤,フルベンジアミド水和剤の殺虫効果は低かった。一方で,エマメクチン安息香酸塩乳剤,スピネトラム水和剤,スピノサド水和剤,カルタップ水溶剤,インドキサカルブ水和剤,BT水和剤は,採集地点に関わらず補正死虫率85%以上の殺虫効果が認められた。

  • 西村 浩志, 市川 貴大
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 144-148
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    ニラ栽培ほ場におけるネダニ類の発生由来は,本ぽでの残存および苗による持ち込みによると考えられる。本研究では栽培終了後に本ぽに残存するネダニ類密度を減少させる方法として,冬期の複数回耕うんによるネダニ類に対する密度低減効果を検討した。その結果,2回耕うんでは密度低減効果が不十分であるが,5回耕うんでは,慣行に比べてネダニ類の密度は低下した。また,5回の耕うんによりニラの残さ重量は小さくなった。このことから,冬期における5回の耕うんはネダニ類の耕種的防除法およびニラ残さの処理方法として利用できる可能性が示唆された。

  • 小澤 朗人, 内山 徹
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 149-152
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    In 2008 and 2009, we investigated the species composition of ladybird beetles and their seasonal changes in tea fields of Shizuoka Prefecture, Japan. The ladybird beetles were detected by three methods: yellow sticky traps in the tea canopy, SE traps on the tea canopy and beating the side of the tea canopy. Five tea fields in our research center and commercial fields were investigated. Pest management at these fields included various pesticide and non-pesticide control measures. Eight species of the ladybird were found; Chilocorus kuwanae Silvestri, Pseudoscymnus hareja (Weise), Hyperaspis japonica (Crotch), Harmonia axyridis (Pallas), Scymnus (Pullus) kawamurai (Ohta), Coccinella septempunctata Linnaeus, Propylea japonica (Thunberg), and Phymatosternus lewisii (Crotch). The dominant species were C. kuwanae, P. hareja and H. japonica. These three species are predators of scales, and the others seem to be predators of aphids. The peaks of C. kuwanae occurrence in 2008 were observed at the end of June, the beginning of August and mid-September. The peaks of P. hareja were observed from the end of August to the beginning of September, and H. japonica's peaks were observed at the beginning of June and mid-July. The number of C. kuwanae captured in the non-pesticide field was more than those in reduced pesticide and conventional control fields and the number of P. hareja captured in the reduced pesticide field was more than those in other fields.

  • 山﨑 大樹, 糸山 享
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 153-155
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    神奈川県川崎市の都市農業ナシ園において,土着カブリダニの発生消長と種構成を調査した。こうした市街地に点在する圃場においても多くのカブリダニ類が生息していることを確認し,その発生消長と種構成からハダニ類の密度抑制効果も推察された。本研究の結果が当該地域における土着天敵利用の可能性を示唆し,薬剤に過度に依存しない新たなハダニ類防除体系の構築に寄与することを期待する。

  • 庄司 俊彦
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 156-159
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    生物多様性の指標となり得る生物種の候補としてゴミムシ類が考えられている。しかし,埼玉県内のナシ園でのゴミムシ類の種類は不明であるため,2010年6月~12月までの間,埼玉県内ナシ園12園にピットホールトラップを設置して捕獲された地表徘徊性ゴミムシ類の種類及び数を調査した。捕獲されたゴミムシ類は12,928頭で31種類が同定可能であった。その内,セアカヒラタゴミムシ,ホシボシゴミムシ,コゴモクムシが優占種であった。また,園内の下草管理が捕獲個体数に影響することが認められた。

  • 加藤 綾奈, 星 秀男, 山口 修平, 小野 剛, 菅原 優司, 竹内 浩二
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 160-165
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    2009年4月,東京都青梅市のウメに発生したウメ輪紋ウイルス (Plum pox virus) の拡散防止を目的として,媒介虫であるアブラムシ類の発生消長を調査し,春季における防除対策を検討した。東京都青梅市における有翅アブラムシの飛来は,1~3月にはすでに認められ,その後,4~6月,7~8月,10月下旬~ 12月上旬の年3回のピークがみられた。ウメ樹上での寄生は,年2回大きなピークがあり,1回目は2月下旬に越冬卵から幹母の孵化により始まり,4月上旬より主にウメコブアブラムシの無翅虫が急増し,4月下旬からはムギワラギクオマルアブラムシの寄生が6月まで継続した。2回目は,10月中下旬に有翅アブラムシが飛来,産卵雌を産仔,その後飛来する有翅雄との交尾により12月上旬まで産卵が行われた。春季の薬剤防除では,4月から増加する無翅虫を対象に行われていた慣行防除に対して,幹母をターゲットに萌芽期から満開期 (3月上旬~3月中下旬) までの間に1回の散布を行うことで,最長で38日間アブラムシの寄生を低密度に抑制できた。また,4月下旬以降に葉巻き症状を引き起こす種に対しては,アセタミプリド水溶剤およびチアクロプリド水和剤の2剤が即効的かつ高い効果を示した。

  • 加藤 綾奈, 星 秀男, 山口 修平, 小野 剛, 菅原 優司, 竹内 浩二
    2015 年 2015 巻 62 号 p. 166-170
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2017/02/13
    ジャーナル フリー

    東京都で発生しているウメ輪紋ウイルスの拡散防止を目的として,秋季に産卵のためにスモモに飛来するアブラムシ類に対して3ヵ年で7種薬剤の防除効果を検討した。その結果,ネオニコチノイド系薬剤では,アセタミプリド水溶剤の効果が高く,2ヵ年の試験とも有翅・無翅虫合計の補正密度指数が概ね0.4~5.5と安定した殺虫効果を示し,秋季の防除薬剤として実用性が高かった。一方,同一系統であってもイミダクロプリド水和剤,チアクロプリド水和剤,ジノテフラン水溶剤は,有翅虫に対する効果がアセタミプリド水溶剤より劣り,実用性は不十分であった。また,ピメトロジン水和剤,ピリフルキナゾン水和剤,フロニカミド水和剤は有翅虫に対して効果が低かった。

研究発表会講演要旨
新たに発生が確認された病害虫
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