2017 年 2017 巻 64 号 p. 94-97
寄主範囲の広さからアブラムシ類防除への活用が検討されているナケルクロアブラバチについて,ワタアブラムシを寄主とした場合の生存と発育を飼育温度16℃,20℃,25℃および28℃において調査した。なお,実験には寄生行動を確認した上で有効な産卵行動が認められた個体を供試した。その結果,各温度でマミー化率は80% 以上となり,マミー化した個体からの羽化率は85%以上となった。マミー化までの平均日数は,16℃で13.4日,20℃で8.5日,25℃で6.0日,28℃で5.8日となり,羽化までの平均日数は,16℃で26.6日,20℃で17.7日,25℃で13.2日,28℃で12.0日と飼育温度が高くなるにつれて短かくなった。また,飼育温度(T)と発育速度(発育日数の逆数:1/D;D:羽化までの発育日数)との直線回帰分析より,産卵から羽化までは1/D=0.0039T-0.0224 R2=0.954)の回帰式が得られ,発育零点は5.7℃,有効積算温度は261.1℃と算出された。この結果から,既報告のアブラバチに比べると増殖能力の低さが示唆され,これを補う技術導入が必要と考えられる。