関東東山病害虫研究会報
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(花卉・花木・樹木の虫害)
キタネグサレセンチュウによるセンリョウ根腐線虫病(新称)
安田 智昭 高木 素紀札 周平岩堀 英晶氏家 有美小川 孝之
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2020 年 67 巻 1 号 p. 84-86

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抄録

2017 年 4 月に茨城県神栖市須田のセンリョウ 10 ~ 15 年生樹において,葉色が黄色を呈し,根には黒変や表面の腐敗が生じる未報告の障害が発生し,採取した被害株の根から多数のネグサレセンチュウが分離された。分離されたネグサレセンチュウをキャロットディスク法により増殖し,無症状のセンリョウ苗に接種したところ,根の黒変症状が再現された。被害株の根から分離された線虫は,体長 439 ~ 600 µm,V 値 81(最小~最大:79~85),口針長 15 µm(最小~最大:14 ~ 16 µm),尾部形態は丸みを帯び,唇部体環数は3,痕跡化した卵巣は確認されなかった。分離された線虫の 28S rDNA D2/D3 領域の塩基配列は,キタネグサレセンチュウ Pratylenchus penetrans (Cobb) Filipjev & Schuurmans Stekhoven と 100%の相同性を示した。さらに,前記接種苗の根の黒変部位から分離された線虫も同様にキタネグサレセンチュウと同定されたことから,本症状はキタネグサレセンチュウにより引き起こされることが明らかとなった。これまでキタネグサレセンチュウによるセンリョウの加害は報告がないことから,本種によるセンリョウの病害をセンリョウ根腐線虫病(Root lesion)と命名することを提案する。

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© 2020 関東東山病害虫研究会
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