2021年8月から9月に茨城県内2地点で採集したイネカメムシ個体群を用いて16L-8Dの日長条件下で,22,25,28,31℃の各温度で卵塊ごとにそれぞれ集団飼育し,卵から羽化までの発育日数を調査した。飼育温度が高いほど幼虫の発育期間は短縮したが31℃では発育の遅延が認められた。飼育温度22,25,28℃では発育速度と温度との間に高い相関関係が認められ,発育速度と温度との回帰直線から算出した卵から羽化までの発育零点は15.8℃,有効積算温度は344.8日度であった。また,2齢幼虫以降に個体別に飼育した場合でもほぼ同様の結果が得られた。得られたパラメータを用いた発生時期の予測手法の適合性を検証するため,水田における本種の発生時期と,メッシュ農業気象データシステムで得られた調査地点の気温データを用いて有効積算温度から予測した発生時期との比較を行った。その結果,水田での発生時期が1齢から羽化まで28日であったのに対し,予測では32日となり,4日程度の違いがあった。本研究では孵化率や羽化率が低かったことから餌や水分条件等の飼育環境を改善する必要があると考えられる。