杏林医学会雑誌
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ボツリヌス A 型食中毒 : 本邦初発例について
宗玄 俊一中村 幸義野崎 佳枝山田 俊子保科 弘毅本城 繁新井 裕二
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1979 年 10 巻 1 号 p. 25-36

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抄録

ボツリヌスA型食中毒の本邦初発例を経験したので報告する。症例は, 東京都調布市に在住する15歳と11歳の姉妹で, ともに昭和51年8月11日, すっぱく悪臭のあるさつまあげを食べた後, 倦怠感, 眼瞼下垂, 発語障害, 嚥下困難, 呼吸困難が出現し入院した。入院当日, ボツリヌス食中毒と診断し, ボツリヌスE型抗毒素血清を投与した。妹は第8病日に死亡した。姉は意識は明瞭であったが全身の運動麻痺, 呼吸麻痺, 嚥下麻痺, 腸管運動麻痺があり145日間の気管内挿管による呼吸管理, 中心静脈栄養による栄養管理及び感染症に対する抗生物質療法等をおこなって全治せしめた。姉妹ともに8月16日の血清からボツリヌスA型毒素が証明され, 8月17日の妹の糞便からはボツリヌスA型菌が証明された。本症の疫学, 臨床上の問題点を中心に考察を加えた。

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© 1979 杏林医学会
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