杏林医学会雑誌
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開心術における心筋保護法の研究 : とくに Young 液および心表面局所冷却法併用による cold potassium cardioplegia の有用性について
石橋 修
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1982 年 13 巻 4 号 p. 467-479

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抄録

体外循環下開心術ことに大動脈遮断下での心臓手術の増加に伴い, 術中の心筋保護法は必須の手段となりつつある。著者は雑種成犬19頭を用い大動脈遮断時間120分における各種心筋保護法を次の3群に分け比較検討を行った。第I群 : 電気的心室細動誘発群5頭 第II群 : 心表面局所冷却群7頭 第III群 : Young液併用による大動脈基部穿刺冷却心筋保護液冠灌流および心表面局所冷却群7頭 各群における大動脈遮断前および遮断解除後の心機能を人工心肺離脱状況, 心筋逸脱酵素, 心筋代謝, 血行力学的検索などから比較検討を行った。第I群は, 大動脈遮断解除後の心蘇生状態は悪く全例人工心肺離脱不能であった。又心筋逸脱酵素, 心筋代謝, 血行力学的検索などの比較検討でも心筋保護効果は悪く他の2群より劣っていた。第II群は, 7頭中2頭のみが人工心肺離脱可能でありI群より優れた心筋保護法と思われた。しかし120分間という長時間の大動脈遮断は不適当と思われtopical coolingによる安全な大動脈遮断時間は60∿100分前後という諸家の意見と一致した。第III群は, 全例人工心肺離脱可能であり, 心筋逸脱酵素, 血行力学的検索などの比較検討でも他の2群より良好な心機能回復を示し, 優れた心筋保護法と思われた。以上の結果より, 第III群のYoung液併用による大動脈基部穿刺冷却心筋保護液冠灌流および心表面局所冷却法は, 可及的すみやかな心停止, それに続く心筋の均一な冷却維持を得ることが出来, 大動脈遮断解除後においても最も安定した心機能回復を示した。本法は優れた心筋保護効果を示し, 連続120分間の大動脈遮断は安全に行いうることが証明され, 臨床においても有用な手段であることが示唆された。

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© 1982 杏林医学会
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