杏林医学会雑誌
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骨髄内脂肪壊死の 1 例
島田 啓史石井 良章河路 渡
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1983 年 14 巻 3 号 p. 343-349

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抄録
極めて稀な, 外傷性膵炎に続発した多発性骨髄内脂肪壊死の1例を経験したので報告する。症例は20歳の女性で, 昭和55年12月, 交通事故でハンドルにより腹部を強打した。初診医で治療中, 熱発し腹痛が強く, 受傷後約3週間にて, 両側足関節を中心とする炎症症状が出現した。諸検査の検果, 仮性膵嚢胞, 骨髄炎の診断で, 抗生物質の投与と腹部に対する外科的処置が2回にわたり行なわれた。以後, 腹部症状は軽快したが, 四肢の骨髄炎様症状は時折, 再発をくり返していた。X線上, 長管骨のみならず扁平骨, 短管骨に多発性の骨透亮像を認めた。本症例は多発性骨髄炎との鑑別が困難であったが, 臨床所見, 諸検査の結果, 治療経過などを総合して交通事故により外傷性膵炎を惹起し, 仮性膵嚢胞と骨髄内脂肪壊死を合併したものと診断した。
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© 1983 杏林医学会
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